「…何で稚早が泣くんだよ。俺が泣きたいくらいなんだけど」 先輩の、そんな言葉が聞こえた瞬間、背中からふわっと先輩がいつもつけてる香水の匂いがした。 先輩があたしにブレザーをかけてくれたんだ。 「稚早」 優しい声が聞こえる。 上からじゃなくて、正面から。 見ると、あたしと目線を合わせるように先輩もしゃがんでいた。 「…本音を言うと、」 先輩がまた話しだす。