榊は完璧で、…完璧すぎたの。
私の言ったことにはいつも忠実に、正確に事をなしてくれたわ。
でも、ダメね。
出会い方が悪すぎたのよ。
ねぇ、私たち。
もっと早くに、もっと違う出会い方をしていたのならば。
…お互い、素直になれたのかしら。
そんなこと言っても、どうしようもないのはわかっているけれど。
きっと私は、真っ白にも、真っ黒にもなれない。
涙を流す私にハンカチを差し出して。
あなたは、どこまでも執事なのね。
「榊」
ケーキを食べ終えた榊が顔をあげた。
……これは、バレンタインデーのプレゼントよ?
「ホワイトデー、忘れないで」
「…お嬢様のお気に召されますようなものをご用意いたします」
その頃には私は人妻で、榊はどこかへ行ってしまうけれど。
私は榊の言葉通り、幸せになるわ。
…誰へのお願いなのかはわからない。
でも、この恋が良い思い出になるように――思い出にするから。
一度だけ、チャンスを。
あと一ヶ月、
彼を…想ってもいいでしょう?
END

