「これは…」
「あなたに」
一言返すと、榊は私の顔と両手を交互に見た。
私は、笑顔を崩さない。
「…最近、お嬢様の両手に傷や火傷の痕が増えて気になっておりましたが、やっとその理由がわかりました」
「やっぱり、気づいていたのね」
「当たり前です。お嬢様の異変にはすぐに気づきます」
まさか私のためだとは思いませんでしたが、と榊はため息をついた。
一流のパティシエさんに教えてもらったチョコレートケーキ。
包丁を握るなんて数えるほどしかなかった私が、チョコレートを刻んだわ。
最初は直接チョコレートを火にかけていたけれど、湯煎することも覚えた。
初めて、榊への気持ちを形にしたの。

