コンコン。
ドアをノックする音に返事をすると、失礼いたしますと、榊が静かに入ってきた。
「ちゃんと来たのね」
「必ず、とお嬢様がおっしゃいましたので。しかし、もしもこのことが旦那様のお耳に触れたら…」
「大丈夫よ。最後だから」
そう、これはわがまま。
執事とはいえど、婚約者がいる私の部屋には、彼以外の男性が入ることは禁止されてる。
でも、最後だから。
わがままを言わせて。
榊を椅子に座らせて、私はベッドの横に置いていた箱を持って来た。
まるで、壊れものを扱うようにそっと、榊の目の前に置く。
目で合図すると、榊は箱を開いた。

