「お嬢様、お身体の方は…」
「やめて」
わかってるのに、心配する振りをして。
ここ最近、榊は私を甘やかす。
前は体調を崩してもこんなに心配することはなかったわ。
例え“振り”であっても。
どうしてって…理由は簡単。
あと数日で、榊は私の執事という役目を終えるから。
その後どうするかなんて知らない。
つまりタイムリミットはあと数日で、きれてしまえば二度と会えないのでしょうね。
榊、と呼ぶと返事をして榊はミラー越しに私と目を合わせた。
「あとで、私の部屋に来て」
「お嬢様のお部屋に、ですか」
「ええ、必ず」
榊は一瞬ためらったけれど、いつも通りの言葉を返してきた。

