1m離れた場所に立つ榊を見上げる。
目が合うと、榊はにっこりという言葉がよく当てはまりそうな笑顔を向けた。
よく出来た執事だこと。
心の中で呟く。
これは嫌味になるかしら?
…榊には通用しないことはわかっているのに。
「榊、今年も作ってちょうだい」
「…よろしいのですか?」
私の言葉に、榊は控えめに言葉を返してきた。
…私にはわざとらしく見えてしまうわ。
「ええ、去年も喜んでもらえたもの。ビターチョコレートでね」
「……かしこまりました」
あぁ、もう。
やめてほしいわ。
その妙な間を。
最近とてもイライラするの。
この、執事。
もうすぐ結婚するのに。

