男が去った瞬間に
困った表情は消え失せていた。


「あんたお人好し?」


何故か眉間に皺を寄せて僕を睨み付ける。

この瞳。

化粧落ちててもわかる。

間違いなく
あの生意気な少女だ。


「君はありがとうもいえないの?」

「私はそういう風に助けたりされるの大嫌いなのよ」


憎しみ込められた目で言われても
どうしようもない。


「とんだひねくれたお嬢様だ」


「悪かったわね」


ショッピングセンター前の通りで口論している僕たちを、沢山の人々がチラチラ横目で見ては通りすぎていく。