夜獣-Stairway to the clown-

「声でもかけてくれればいいのに」

「考え事の最中に水を差したくはありません」

「ビビラされるよりはマシなんだけどな」

前もっていってくれれば、寿命を縮めなくて済んだものを。

「待ち合わせの場所を知っていれば、驚くことにはならなかったとは思います」

「そこらへんは雪坂の心意気で許してくれればありがたいところだな」

「私はそんなに大きな心を持ち合わせていません」

笑顔だが、周りの雰囲気はそうはいっていないらしい。

「今日は少し覚悟を決めてもらわなくてはなりません」

「覚悟?」

そんなに何を決めてかからなくちゃならないというのだ。

「もし、今日犯人と出会った場合、どうなるかぐらいは分かりますよね?」

戦うとかそんな感じだろうか。

「逃げる場所がなくなった場合、戦うことになります」

「まあな」

「その時のあなたはまったくもって役に立たないといえるでしょう」

頼りにしてるとは言っていたが、それが正直なところだろう。

「それで?」

「私が戦ってる時に私だけでも置いて逃げることを最優先してください」

「逃げる場所がないのに?」

「ないですが作ることはできます」

どこにあったのか、弓を握り閉めて僕に見せる。

「なんでそんな罪悪感を背負うようなことしなくちゃならないの?」

「あなたに可能性があるかもしれませんからね」

「可能性?」

「あなたは力に目覚めていません」

「そりゃあまあな」

「どのような力があるかはわかりません。強い力があるかもしれない、もしくは弱い力かもしれません」

「それが相手に勝てる可能性ってわけか」

「五分五分ですけどね」

ここでそんな大きな選択際に強いられるとは思ってはいなかった。

「そのときになったら考えるっていうのはなし?」

「ありません」

考えれば考えるほど答えが出てこない。