夜獣-Stairway to the clown-

行動するのは人が寝静まった夜がいい。

今夜事件が起こるかどうかは分からないが、一応見回ったほうがいいだろう。

犯人はどこかに逃げたかもしれないけど、まだ近くにいるかもしれない。

出来ればこんなことは起きてほしくないが、やらないなんて保証はない。

考えていても目の前に犯人が現れるわけがないので、時間まで体力温存として寝ることにした。

数時間が経ったところで、セットしていた目覚ましよりも先に自然と目を覚ました。

中途半端に寝たせいで未だに眠気が覚めやらない。

ここは何が何でも動かなければ約束を破ることになる。

明かりをつけると着替えを済ます。

「さてと」

私服に着替えると、部屋から出て誰も起こさないようにゆっくりと廊下を歩いていく。

(これで起きたら耳のよさは褒め称えてやりたいところだ)

無駄な思考を立てながらも、一階まで降りていく。

全くといっていいほどばれることはなく、起きるなんてことは杞憂でしかなかった。

家から出ると、辺りからは何も聞こえず不気味なくらい静かである。

それに朝とは違い真っ黒というよりは群青色をした空が上から見下ろしている。

「待ち合わせはどこだったか?」

そんな話題は一切してなかった。

アイツが家から出てしまっていたら家まで行ったとしても時間の無駄だし、こんな時間に行くことは迷惑に値する。

「弱ったな」

ぬけているとよく人から言われた気がする。

それを悔いたところでどうなるわけでもない。

まさかとは思うけど、雪坂の奴が寝てるとかいうオチはないだろうか。

それで探す手間も省けていいのだが、犯人に出会った場合はものすごくまずいことになりそうだ。

「迎えにくるとかいうのだったら楽なんだけどな」

「迎えに行くほうは少し疲れます」

「え?」

隣を見てみると、そこには雪坂が立っている。

「いつからそこに?」

「さっきです。何か考え事をして見えてなかったのでしょう」

気配を消して近づいてくることなどお手の物なのだろうか。

考えていたからといって、横に来るなら気づいていたはずだ。