夜獣-Stairway to the clown-

家から出ると、雪坂のことを出来るだけ知るためにゆっくり歩く。

「学校に入る前って何やってたの?」

「家で本を読んだり、弓道を嗜むくらいのことをしながら暮らしてました」

「学校に入る前から豪邸の娘になっていたのか」

「五年前からお世話になっています」

僕が十歳の頃か。

五年前も容姿は同じだったのだろうか。

容姿の話は今度でもいい。

どうせ同じだという答えが返ってくるのがオチだ。

「家にずっと?バイトとかしなかったの?」

「する必要がないんです、金銭に困ることはありません」

「金だけがバイト目的じゃないと思うよ、友達を作ろうとかは思わないの?」

「私よりも先に土に帰ってしまいます。そこで感情が入ってしまいますから作りたくはないのです」

悲しそうな顔で、何か思い出にふけるような感じだった。

「お前らの寿命ってどれぐらいあるんだ?」

「人間よりもずっと長いです」

半永久的というわけか。

「でも、殺されればそこで終わりです」

誰も口にしないようなことをさらりという雪坂に驚きを隠せない。

「今回人探しのために学校にきたわけだろ。そいつがいるという確証があるってわけか」

「この西暦に学校の裏庭に来るということを告げてました。それは確かなようで、あの方に近い血の感覚もしました」

「そいつの寿命も少ないわけ?」

「私以外の人間は同じ寿命の長さです」

「寂しいだろ?友達よりも大切な奴なんだぞ?」

「愁苦辛勤の思いをするでしょう。でも、それだけではないのです」

「そうか」

「あの方に会える喜びは離別する辛さよりも、大きな差が出ます」

「そいつと会うことがどんなことよりも大切だってことなのか」

「それ以外に求める気はございません」

雪坂に愛されてる奴は幸せ者なのかもしれない。

逆に言えば、ちょっと重い感じもする。

しかし、僕にはよく解らないところだ。

十五年しか生きていない若造が死別などあるわけがない。