夜獣-Stairway to the clown-

「これからどうする?」

「学校に戻ります」

「真面目なんだな」

戻ろうと思えば戻れるけど、やる気が出ないのに戻っても何かをする気にもならない。

「時間は限られています。その中で数多のことを学べれば見解は広がります」

「勉強、楽しいか?」

「世界が広がることは素敵だとは思えません?」

笑顔で言う雪坂にとって生きがいなんだろうと思う。

五百年経った今も知らないことがあるならば、世界の広さは見えてこない。

「そうかな」

自分は辿り着く事がない境地だ。

時間も経ち、今から家を出れば四時間目に間に合う。

アキラの様子も気になるけど、無茶もしないということはわかっているから学校に行っても問題はない。

アキラは体が危篤だったけど、桜子ちゃんは心が危篤状態だ。

そっとしておくべきなのかもしれないけど気になる。

「私は行きますね」

雪坂は椅子から立ち上がる。

「今日は悪かったよ。いきなり連れてきて怪我さして」

「人の命よりも重いものはないのです。私の怪我などを同等の扱いにしてはお姉様が可哀想です」

例えそうだとしても、雪坂の綺麗な部分に傷がつくことに気が引ける。

「どうしました?」

僕の視線に気づいたのか、首をかしげていた。

「何でもない。学校まで送っていくよ」

「大丈夫、電話をすれば迎えに来てもらえます」

「僕の頼みだと思って送らしてくれない?」

「ふふ、そう仰るなら構いません」

雪坂のことをもう少し知りたいとも思った。

アキラの命の恩人であるから、さらに興味が出てくるのも当然だ。