夜獣-Stairway to the clown-

「雪坂」

「どうかいたしました?」

「他にも能力をもった奴らがいるんだよね?」

能力者はアキラ以外にどんな力があるのか。

雪坂のは分かってるけど、具体的なことは分かっていない。

「まだ知らないことが多いようですから、力について少しばかり説明でもしましょうか?」

「頼むよ」

「力は3種類に分かれます」

「意外と少ないんだな」

「具体的にいえば、相手を傷つける能力、身体の性能を伸ばす能力、自然に関する能力です」

「解りやすいな。雪坂は自然で、アキラは性能を伸ばす能力か」

「その二つの能力ならばまだ安心できますが、傷つける能力というのは使い方次第で手がつけられなくなります」

「そうなのか」

「その力が微小ならば問題はありません。多大ならば人を簡単に消すことや世界に危害を及ぼすことだって出来ます」

「ウソだろ?危険な思考の人間が力に目覚めたら、何しでかすかわからない」

「そういう人間に限って何も起こさないほうが多いのかもしれません」

「何故?」

「今の世界の状況を考えればわかるでしょう?」

「まあな」

「何も起こらず世界は平穏です。ちょこちょこと事件は起こりますが世界が危なくなった事例はないのです」

これから起こらない可能性はないとはいえない。

血族はざっと数えて五百年前からいることだろうし、五百年も経てば変な奴が現れてもおかしくはない。

表では気づかれない程度に、影でおかしなことでもやっているのかもしれない。

自分と近所の奴らに危害がでなければ、影で何をされようとも構わないと思っていた。

「ところで、今何時だ?」

雪坂は腕につけていた高級そうなブランド時計を眺める。

近くに時計があったのだが、ついつい聞いてしまった。

「11時ですね」

「そうか」

3時間目の最中であり、学校へ行こうなんて気は起こらなかった。