夜獣-Stairway to the clown-

早く謝ってくれて大助かりだ。

今日も断られれば、3日ぐらい寝込む勢いだ。

「お前の家族元気か?」

暗い雰囲気を打開するためには話題を変えるしかない。

「いきなり家族のことなんて聞いてどうすんの?」

「最近会ってないから気になっただけ」

「お母さんは相変わらず忙しいよ。妹は元気、生意気になってきたけどね」

父親はと聞こうとしたが、それは迂闊でしかない。

すでにこの世にはおらず、母親が色々飛び回っていて家にいない。

妹と二人暮しといえるほどだった。

お金などは振り込まれているんだろう。

妹はアキラを尊敬しているのか好きなのか、家に遊びに来ることが多い。

名前は確か、桜子だったか。

どうも子供に子をつけるのが好きな家族らしい。

夕子をより元気にした感じで、たれ目の夕子に対して桜子は釣り目で、運動神経は抜群だ。

1歳年下であり、今は思春期真っ盛りな中学3年である。

「あの子、今年から受験じゃない?ピリピリして、ちょっと怖いんだわ」

「試験に対して真剣だったんだ」

「誰だって高校に行きたいのは当然じゃない」

「そうだな」

去年の僕も必死だったような思い出がある。

2年間遊んでいたから、3年で巻き返さなければならなかった。

夕子は真面目だったから、いつもどおりしていれば通ることは間違いなかった。

高校はどこでもいいと思っていたわけではなく、ここ以外の高校になると遠くなってしまう。

そうなれば即効でやる気を失っていた。

「桜子ちゃんも勉強得意そうじゃないしな」

「どっちかっていうと体育会系だから大変かも」

「テニスの推薦でいけるんじゃなかったっけ?」

「そうらしいけど、弥生丘がいいみたい」

子供のころからテニスをしていたようで、夕子もつき合わされていたようだが、相手にならなかったらしい。

中学に入ってからもテニスを続けていて、全国レベルの腕前を持つ子だ。

どっかの高校からも誘われているようだったが、それを蹴って弥生丘に入ろうとしている。

弥生丘にもテニス部はある。

そんなに強くはなく、全国に行ったことすらもなく、ないないづくしのテニス部だ。