夜獣-Stairway to the clown-

まだぼーっとしているようで、机の中のものをカバンに詰めていた。

女子たちも話しかけているようだったが、聞こえているのか聞こえていないのかわからない様子だった。

(どうするか)

カバンを持ち上げてこちらに向かってきていた。

「おい、夕子」

入り口に出てきたところ呼び止めてみると、こちらを向く。

少し憂鬱げに見えたが、気のせいのようにも思えた。

「コウ、どうしたの?」

「今日も乾と?」

「一人だけど」

困ったような顔もしていないし、避けられているわけでもないようだ。

「じゃ、一緒に帰る?」

「いいけど珍しいね」

「たまにはいいんじゃないかなんて」

二人で靴箱までいき、履き替え校門のほうまで歩いていく。

何か話すってわけでもなかったが、苦痛ではなかった。

長年一緒にいるせいか、話がなくてもいい感じである。

しかし、夕子の態度のおかしいからずっと気になっている。

「どうした?」

校門を過ぎてちょっと経ったところで聞いてみる。

「何?」

「ずっとボーっとしてるけど、何考えてるの?」

夕子はうつむき加減になりつつも、少し時間を置きこちらを見る。

「この二日間だけど、コウに悪いことしたかなとか思ってた」

自分なりに反省しているようである。

「別にコウが邪魔なワケじゃないのにね。そこまでする必要はなかったのに」

僕は何も言わずに聞いていた。

「自分自身の問題なのに、コウがいたらとか言い訳だったのかもしれない」

「そうか」

「ゴメン」

「気にしちゃいない」

すっげえ気にしていたのだが、ややこしくなるのであくまでふせておく。