夜獣-Stairway to the clown-

「きっかけは?」

「町を歩いている時に血の騒ぎを感じたようです。私も感じました」

「それだけ?養女にならないかとでも言われたのか?」

「困っているなら手助けをしようと協力的な姿勢を見せてもらいました」

便利な話だ。

血の騒ぎさえ感じられれば、血縁が解ると言うのだから儲けものだ。

「お前が先祖だってことは理解したの?」

「あなたと同じくよき理解者で助かります」

どんなヤツなんだろうか、血の騒ぎだけで養女に迎え入れようなんていうトンチキなヤツは。

僕はあまり理解した覚えはない。

「ちょっと待て、500年以上も生きてるのに身分証明はどうしてるの?」

「最初の時はお金も何も必要はなかったんですけどね。最近になって色々とお金や他手続きが必要なようで」

「最近になってって何回か名前とか生年月日とか変えたりしてるの?」

「手続きを踏まないと正体がばれることになります。養女として暮らすことになった後は資金はございますので、変更に特別な手間はかかりません」

とんでもない苦労をしてるんだなと思いつつも、コイツに関心を示す。

「なんでこの学校に入ってきたんだ?」

そういえば特に学校なんていく必要もなかったはずだ。

「聞きたいですか?」

「ああ」

「人を探してるんですよ」

「男なの?」

「そうです。あの人の生まれ変わりがここに入学してきました」

「あの人?生まれ変わり?」

輪廻転生とかいうヤツだろうか。

そういわれて見れば、500年以上生きているとそんなことに出くわす可能性もありしだ。

「何でもありません」

「そうか。見つかるといいな」

あえて聞き返すことを止めた。

本人が何でもないというのなら、そのままにしておくべきなのかもしれない。

「そのために養女にさせていただいて、協力までしてもらってます」

瞳の奥には決心めいたものを見たような気がした。

随分と話し込んでたみたいで、校内にチャイムの音が鳴り響く。