夜獣-Stairway to the clown-

それをマジックで書いて歩けば、瞬時に恥さらしになるだろう。

「今は目が黒いんだな」

穏やかな眼差しの奥は黒かった。

だが、言いたいのはこれではない。

「自由自在に目の色はコントロールできます」

目を閉じ、次に開けたときには昨日の紅き目に変化していた。

「実証できたでしょう?」

いつ見てもその瞳には慣れることはできそうにない。

「この状態の時に限り力を行使することができます」

またうるさい音を鳴らすのかと思っていたけど、何もせず黒目に戻す。

「随時紅目にしておくと、体力の消耗が激しいので変えさせていただきました」

「生まれた時から紅目じゃないの?」

「13歳くらいまでは紅目のままでコントロールせずとも、体力が削り取られることはないですよ」

「13歳を越えると体力を削られるのは何で?」

「大人になるにつれて力が増強するんですよ」

「何?」

「スイッチが入ったままですと、宇宙人としても持っている力が強すぎて抑えるのに体力を非常に使うんです。力を使わなくても枠から溢れ返って体を破壊しかねないんです。だからこそ、スイッチを切っておかないと無駄に体力を使うことになります」

「わざわざ抑える必要なんかあるの?」

「ありますよ。リミッターを外したままだと体の細胞が限界値、つまり今の自分の許容量ですね、それを超えているままだから壊れていくんです」

「壊れる?」

「そのままの意味です。壊れて最後には動かなくなります」

「そんなやっかいな力なのか」

「普通は存在しない力ですから、持てばそれなりのリスクがあります」

「力を使う時もそれなりに抑えているんだな」

「抑えずに行使することは死に近きます」

懐かしんでいるような顔で遠くを見ているのだが、その瞳は少し潤んでいた。