「見えないな」

大きい立て札とはいえ、何人もの名前が載ってるものだから字は小さい。

近くにいこうにも、人が群がりすぎて中に入って行くことはできなかった。

人が少なくなるまで待つことにする。

自分は焦って前に出ようなんて気はない。

数分経ち、大体見る位置までいけるようになったのでそこまで歩んでいく。

1-1から1-7まであるのだが、それを順に見ていくのも中々時間がかかることだった。

「面倒さい作業だな」

自分の苗字、神崎のか行の欄を見れば済むことなんだがな。

「あったあった!」

横でどでかい声を出しながら、喜んでる夕子がいる。

(僕が必死で探してるのにそんなに喜ぶなよ)

さすがに時間ももうそろそろ迫ってきている。

「あれ、まだ見つからないの?」

いかにも勝ち誇った顔をしながら、こちらを見ている。

名前を見つけるだけの勝負事なんて面白くないのでまっぴらごめんだ。

1-5まできてか行を探していると、やっと神埼という苗字を見出し自分の名前も見つけることができた。

周りを見渡せば、すでに大半の生徒は自分の教室へと赴いていた。

自分もさっさと教室へと向かうことにした。

「もうちょっとわかり易くしといてほしいものだ」

見つかったのはいいものの、やけに時間がかかってしまった自分探し。

「いいじゃないの。過ぎたことはとやかく言わないほうがいいと思うけど」

夕子はそれを宥めるかのごとく、隣を歩いている。

「それもそうか」

歩いているといつの間にか、1-5という札を見かける。

一階なのでそこそこ近い場所にあった。

3年になれば3階まで上らなければならないのかと思うと今から憂鬱になる。

夕子も同じクラスかと思いきや、3組のほうまで歩いていこうとした。

「なんだお前、ここまでくる必要なかったんじゃないか」

「まあまあ、うっかりしたこともあるって」

3組まで歩いていき、中へ消えていく。

(さすがにそれは忘れなさそうな気もするけどな)

時間ももうないのでとっとと中へ入る。