夜獣-Stairway to the clown-

こんな話をしてなければ普通の人間だ。

「百歩譲って信じたとして、何の調査だよ?」

「この星の生態系やら気候の調査ですよ」

「何のためにそんなことを?」

「自分の星が何らかの危機的状況に陥った場合に、ここの星に逃げることができるかどうかですね」

「結果はどうなんだ?」

「適合してます。似たり寄ったりな部分が多々ありますから助かりました」

「そうかよ。で、今まで生きてきたってことか」

「大変でした。言葉は常に変化し、服装も変化する、色々と勉強する機会が増えました」

(全てが信じがたい)

この笑顔の向こう側に秘められたものは何なのか。

これは作り話で、コイツが僕を楽しませるためにこんなことを言っているだけではないのか。

でも、最近会った人物にこんな話はまずしないだろう。

「最初からそんな外見をしてたのか?宇宙人といえばもっと変な形をしてるというのが相場だと思うけどな」

「TVという影響力は大きいですが、そうでもないんです。似たり寄ったりっていいましたよね?それは外見もですよ」

「本当か?」

「信じるも信じないもあなた次第です。信じたくないのならば忘れればいいだけの話です」

本当ならば家のリビングでTVを見て、今日もゆっくり寝ようという気持ちでいたのだが、実際このような話をされては寝るに寝れなくなりそうだった。

「それで、今も連絡を取ってるのか?」

「どことでしょうか?」

「とぼけてるのか?」

「この状況でとぼけれるほど精神鍛錬は積んでません。本当のことを言うと宇宙船は壊れてしまいまして、昔や今の技術じゃ直しようもないですから、取りたくても取りようがないんです」

雪坂が空を見たので自分も見てみたのだが、星があるだけだった。

「その宇宙船は?」

宇宙船さえあれば、何年か先には帰れるはずだろう。

「破棄しました」

「何故?」

「宇宙の情報を漏らすわけにもいきません。それを残すほどの愚行は行えません」