夜獣-Stairway to the clown-

相手は少し寂しそうな顔をしていた。

「お前はここで何をしている?」

「夜の風に当たっていたという理由はどうですか?」

「質問を質問で返すな。それにどうですかって聞かれても僕が答えられるわけがない」

「そうですよね」

(コイツと話してたら調子が狂う)

どこか行くのもありだったが、雪坂が気になって仕方がなかった。

しばらくして、別の質問をしたくなったので聞いてみた。

「お前、さっき自分が祖先だとか言ってたよな。どういうことだ?」

「そのままの意味ですよ。私があなたの祖先、あなたは私の遠い遠い子供に当たるんです」

話が突飛しすぎていて、やはり理解できない。

「お前が生きているのは何でだ?」

普通の人間ならすでに土に返っていてもおかしくはないはずである。

「私が普通の人間じゃないとすれば、辻褄があうでしょう?」

「はあ?」

この世界に普通の人間以外にどんな人間がいるのだというのだろうか。

「私がこの地球上に存在してるモノではなく、宇宙から来たのだとすればどうでしょう?」

「宇宙?バカバカしい。そんな昔から地球と宇宙との交流があれば今頃もっと進歩してる」

(本当にコイツの頭は大丈夫なのだろうか)

それでも、雪坂は話すことを止める気配はない。

「信じる信じないはお任せします。まあ、宇宙からこの星の調査に来たわけです。よく漫画とかにある話でしょう?」

「ここは現実だ」

現実と漫画の話を一緒にしてしまえばそれでこそおかしくなる。

「そう頭を固くせずに、現に私の目を見てどうとも思いませんか?」

言われたとおりに目を見てみれば、さっきと同じく紅い目をしている。

「どうせカラコンかなんかだろう」

「そんなに目は悪くありません」

「今の奴らは目が悪くなくてもするんだ」

「そうですか、今時のファッションには疎い方ですので」

ふふふと笑ってみせる。