夜獣-Stairway to the clown-

暗い夜の月明かりが、自分の姿を照らし出す。

今夜は満月であり、紅く染まっている。

何か不思議なことでもありそうだなと思いながらも、人数の少ない道を歩く。

「不気味だな」

これに霧さえ出てしまえば何かが出てくることは疑いようもないだろう。

気づけば公園の入り口に来ており、周りに人はいない。

冷静になれるならどこでもいいと思いながら公園の中へ入る。

公園には遊具が二、三個あり子供の頃によく遊んだものばかりだった。

その記憶の中には夕子の姿もあり、楽しんでたような気がした。

しかし、男一人でこんなところにいれば変質者と思われかねないだろう。

しばらくしたら帰ろうと思いベンチに座ろうとした時に、遊具が気になって見てみる。

滑り台、ブランコ、ジャングルジムの順で見てみると、最後のジャングルジムの頂上に目が留まる。

そこに自分以外の誰かがいる。

電灯があるので、よく見ればすぐにわかった。

昼にもあった人物、髪の長い人物、雪坂が制服のままで頂上に座っていた。

(一人で何やってるんだろう?)

人のことは言えなかったが、夜に女一人がここにいれば危ないだろう。

最近は物騒なので女子高生はまず狙われる。

ジャングルジムに近づこうとした時に、雪坂がすでに気づいていたようにこちらを見る。

何もいわないまま、そこには冷たい目がある。

昼からは想像のつかない目には僕が映っているのか不思議でならない。

僕を通り越してどこか別のところを見てるのかもしれない。

そして、もう一つおかしい部分がある。

目が紅い。

昼間は確かに黒い目をしていたはずだった。

記憶喪失にでもならない限り、そんなこと忘れるはずもない。

そもそもカラーコンタクトでも入れない限り、人間の目が紅くなるなんてことはないだろうと思う。

果たして雪坂という人物がカラーコンタクトなど着用しようなどとするだろうか。

その本人に聞かなければならないことが沢山ある。

もう一度上を見上げると、そこには誰もいなかった。

「え?」