夜獣-Stairway to the clown-

「おかえり」

「ただいま」

立っているのに気づくが、TVから目を離さない。

コイツの娯楽はこれしかないのかと思う。

(春休みなんだから外に出るくらいしたらどうなんだ)

そんなことを言えば、何をされるのかわからないので口にチャックをかけておく。

アキラをずっと眺めておく趣味はないので、二階へ上がる。

部屋に入ると、かばんをいつもどおりに放り投げる。

制服をぱぱっと脱ぎハンガーにかけると、そのままの格好でベッドに寝転がる。

シャツとトランクス姿でも十分過ごせる気候にはなっている。

外を見ればすでに夕方になっており、今日も一日終わったという実感が訪れる。

「何だかな」

二日で随分と変わってしまっているようだ。

嬉しいとは全く思わない展開にどんどん動いている。

一緒にいた奴が離れるという感覚はこうだったのかと初めて解る。

好きだと気づかない、なんとも因果な話だ。

もっと早くになんていうのはただの言い訳であり、今気持ちを伝えることが夕子の心を動揺を誘うだけだろう。

自分の中で終わらすなんてこともしたくない。

そういえば、まだ二人で帰っていただけで付き合ったとは思えない。

あの様子だと付き合うにはまだ時間もあると思いたい。

まだ学校始まって二日であり、始まったばかりだというのに落ち込んでいては話にならない。

(なんでこんなに悩まなくちゃならない)

いつも考えてないことを考えると頭がパンクしそうになっている。

気づけば夕方から暗闇に染まっている。

頭を冷やすには丁度ほどよい風が吹いており、外に出て気分転換をするために服を着て部屋から出る。

一階に下り、リビングを見ればそこにはすでに両親はいるがアキラの姿はない。

部屋に戻ったのかもしれない。

靴をはき、行く当てもなく家から出る。