夜獣-Stairway to the clown-

「君はどこから来たの?」

「あ?ああ、南中だよ」

「ふーん」

聞いてはみたものの、中学校の話で盛り上がることはない。

他校の女生徒を付け狙っていたわけでもないし、部活で交流していたわけでもない。

「でさ、この学校に入ってかわいい子とか見つけたか?」

よく喋る男だと思いながら、その質問に答えるべく考える。

「他のクラスはよく知らないけど、雪坂とかいいんじゃないかな?」

「お前、雪坂狙ってるのかよ!」

大声で言うと、教室に残っている奴らがこちらを見ている。

当の本人は教室にはいないらしい。

「狙ってるなんて一言も言ってないだろ」

それにしたって、呼び捨てに出来るほどお前は偉いのかと思いたい。

「雪坂かあ、確かに誰もが認める美人だよな」

「君こそ興味があるのかい?」

「雪坂に限らずだがな。お前の目もあながち節穴でもないな」

「そりゃどうも」

コイツに褒められたところであまり嬉しい気もしないところだ。

「他にも興味がある奴がいるのかい?」

「ふん」

得意げな顔になりながら、ニヤニヤし始める。

「一年から三年まで、全クラスに一人は興味を持った奴はいる」

それは素晴らしい、ぜひとも聞いておきたいところだった。

(夕子のことをコイツは知っているのだろうか)

「3組の佐伯夕子って知ってる?」

「佐伯?そっちも狙ってるのか。盛んな男だな」

(お前に言われたくないような気もする)

「知ってるんだ?」

「かわいい部類に入るぜえ?噂じゃ好きな人がいるとかいないとか」

どっからその噂が流れたのかは知らないが、早いものだ。