夜獣-Stairway to the clown-

夕子が積極的に不法侵入を行うことはしないだろうから、前もってある場所を知っていたのかもしれない。

今までに乾の部屋に入ったことがあるということだろう。

少し悔しくなりながらも、その様子を覗いていた。

鍵を差し込んで中へと入っていく。

まだここから出ることはできない。

夕子が去ってから、僕も手がかりがあるか調べなくてはならない。

本当は駄目なのだが、夕子のためだということで許してもらうしかないだろう。

10分程度覗いていると、さっきの表情とは違う希望を見出した明るい顔になった夕子が部屋から出てくる。

こちらに歩いていくるのでバレないように階段から一階下に下りて、そこから覗き込む。

夕子がエレベーター前までたどり着くと、10階に止まっていたエレベーターに乗り込み下へと降りていく。

降りていくのを確認してから階段を上り、5号室まで行くとすぐに行動に移す。

夕子が新聞入れの中から鍵を探していたので、探すと当然あるべきものがそこにある。

鍵を取り出して差込みゆっくりまわすと、ガチャリと思い音と共にドアが開ける。

カギを新聞入れに戻すと緊張しながらも乾の部屋へと入る。

玄関だけでも結構な広さがある。

学生が住んでいいような場所ではないことは見た限りでもいえる。

玄関から廊下を歩いてくるだけでも4つも部屋がある。

突き当たりはリビングとなっており、8畳はある広さがありベランダに出られるだけで、ここには手がかりとなるものはない。

あるのはテレビと机と冷蔵庫とキッチンという質素なつくりである。

ハズレを引いたけど、いつかは答えにたどり着く。

でも、いつ帰ってくるかわからないので時間がない。

リビングから玄関に向かう最に一つずつ開けていく事にする。

「よし、開けて何を見たのか確かめるか」

一番前の部屋を開けるものの、そこには何も無い。

本当に何もなく空であり、窓がポツンとあるだけで冷たい空間が広がっている。

一人だからだろうか、そこまで使うことがないのかもしれない。

ドアを閉めると、次の部屋へとさっさと移ることにした。

次の部屋も開けてみるものの空であり、何の手がかりもない。