桜が顔をかすめていく。

桜の樹が道を作っているようで、自分を挟む形で左右に校門まで並んでいる。

桜の樹が咲いている季節は春であり、出会いの季節でもあり、別れの季節でもある。

僕にとっては出会いはあるがそんなに別れはなかった。

別れといえば、中学生から高校にあがるので、中学校のやつらと別れがあるというくらいだ。

新しい人達にあえるくらいならば、多少の別れも惜しくはない。

友人が多いのかといえばそうでもない。

そこまで人徳があったとも言いがたいし、100人くらい仲良くなろうなんて気もこれといってなかった。

友人数人、知り合い数人といったところだろう。

高校に行くのに中学からの友人や小学からの友人も混じっているので、特にかわり映えしないともいえる。

中学さえ終われば腐れ縁すら切り取ってくれるんじゃないかと期待を込めたものの、簡単にはいかないようだ。

僕が行く高校がそんなに人気があったとは言いがたいものの、近いので利用しようという目的がある人間は多いらしい。

考えにふけりながら校門までの道を歩いていると、後ろから声が聞こえてくる。

「おーい、コウ!」

後ろを振り返れば、走ってくる人物が一人。

スカートをヒラヒラさせながら近くまで来てひざに手をつき、ハアハアといいながら息を切らしている。

「置いてくなよ。一緒にいったっていいじゃんか」

未だに息が整わないのか、中腰で俺を見上げる。

「お前と一緒に登校してたら、遅刻が関の山だろう」

僕は冷静な態度で、相手に接する。

今、目の前にいるのが小学校からの腐れ縁といった人物の一人である。

佐伯夕子という名前であり、今日からここに通う同じ一年だ。