大ちゃんは、ちょっとだけ、こっちに顔を向けて、また山の奥を見つめた。
夏だったら、遠くまで見通せなかったところだけど。
今は冬。
スカスカの枯れ木のおかげで、隠れるところは少ない。
わたしと大ちゃんは、二人して、じぃーっと同じ方向に目を凝らす。
それにしても、声が山びこでこだましたように震えていた。
震えてるけど、お腹の底までズンと響く感じ…。
異様ならないものを感じていたのは、わたしだけじゃなく、大ちゃんも。
二人して、口をつぐんであたりを警戒してる。
なにか、いる。
なにか、出てくる!?
『どこ見とんねん。こっちじゃ』
ビクッとして、肩がこわばる。
声は、わたしたちの後ろからした。

