一人残された私はその場に立ちすくみ、涙が零れそうになるのを必死で堪えていた。



私・桐島紗英架と彼・柳沼蒼太の出逢いは四年前。

高1の春。彼とは同じクラスだった。最初の席替えで隣になったのがキッカケ。それからよく話すようになって、気付けば友達以上恋人未満の関係になっていた。そんな関係が半年続いて、高1の文化祭で関係が変わった。



文化祭最終日。
一般解放の時間が終わり、みんなが片付けに奔走している中、私は教室の窓から後夜祭の準備で慌ただしく動き回る実行委員たちを見ていた。

「サボリか?」

「人聞き悪いなぁ。休憩してただけ」

隣にやってきた蒼太に笑いかける。

「じゃあ俺も休憩!」

蒼太はそう言ってニカッと笑った。
私はこの無邪気な笑い顔が好きだった。

お互いに何も喋らず、周りの喧騒だけが通り過ぎていく。

「ねぇ蒼太」

校庭を見ている蒼太の横顔に呼び掛けると、蒼太は「ん?」と振り向いた。
蒼太と目があって、周りの音が聞こえなくなる。まるで世界に二人だけしかいないみたい。



「私、蒼太が好きだよ」

「俺も」



夕日の中、二人で微笑みあった。