**葵**


シーツを握りしめていた君の手に、一粒の滴がポトリと落ちた。

え?

もしかして泣いているのか?

まさか僕が泣かせた?

慌ててベッドに駆け寄ると、君の考えを全力で否定した。


「あの?福田さん?ごめん。そんなつもりでこの特別室に入ってもらった訳じゃなんだ。」

「じゃあ、どうして?」


細い声で僕に質問をする君の瞳から次々と溢れる涙は、簡単には止められそうにもないと思った。

良かったよ。この前みたいなお化粧をしていなくて。

この涙だとパンダ決定だったに違いない。

そんなことを思いながら、僕は恥ずかしさを堪え、本心を口にした。


「この特別室に入ってもらったのは、こうやって福田さんと話が出来ると思ったから。大部屋だと周りの人達に迷惑掛けちゃうし。この部屋だったらソファもあるしゆっくり出来ると思って。だから昨日はつい、寝ちゃった訳だけど。」