いつも自分が、後輩に指導している言葉を思い出す。 『冷静になり状況をよく確認しろ。』 そうだ。冷静に。なれ。自分。 そう自分に何度も言い聞かすと、頭が冷えて手の震えも収まった。 深呼吸をして、彼女の状態と訴えを頭に叩き込む。 だけど、手術台に移動した彼女に歩み寄る新人の鈴木の姿を目にした途端、僕の口から思っても見ない言葉が飛び出してしまった。 「鈴木。代われ。彼女は私が診る。」と。