**葵**


夢の続きかと思った。

ストレッチャーで運ばれて来た急患が、パンダのあの子だったから。

彼女はまた泣いていた。今度は『痛い。』と言って。

自分が動揺しているのに気が付いた。手が、細かく震えている。


「ええっと。まずは・・・」


新人の鈴木が、ノロノロとしているのが腹立たしく感じる。

もしもこのまま、彼女の身に取り返しのつかない事が起きてしまったら?

早くなんとかしなくては。

こんな焦りと苛立ちを感じたのは、初めてだった。

そして、こんな焦りと苛立ちを、感じてはいけない。