次の日。

学校に着き、教室に向かう廊下で自分の携帯が、音を立てているのに気が付く。

着信は先生。


「もしもし。葵先生?」

「紫乃ちゃん。おはよう。それと・・昨日はごめん。」

「ううん。あの、もう大丈夫?」

「ああ、心配掛けてごめんね。でも、もう大丈夫。僕は前を向いて歩ける。」

「良かった。あ、チャイム鳴っちゃった。葵先生、お仕事頑張ってね?」

「紫乃ちゃんも。授業中に寝ちゃダメだぞ。」


いつもの先生の声に、私はホッとしながら携帯を切った。

先生が元気になってくれて、本当に嬉しい。

嬉しいけれど。

私の心の中で、先生の言葉がこだまする。

『僕は前を向いて歩ける。』

先生。

私は自分の、歩いて行く先が、わからないの・・・。