**葵**


自分の耳を疑った。君は僕を好きだと言った?

こんなおっさんの僕を好きだと、確かに言ってくれたよな?

夢じゃないことを確かめるために、僕の腕の中で涙を流す君の濡れた頬をそっと指で拭う。

君は抵抗もせずに黙って、僕の指を受け入れてくれた。

そんな君に、ますます愛しさが募り溢れ出す。

拭っても、拭っても、君の涙は止まらない。

もう、指で拭うだけじゃ足りない。

僕は君の頬に伝う涙に、そっと唇を落とす。