「大丈夫?ほら、ここに座って。それから、はい。これ使って。」


707号室に入った私を先生は、優しく誘導してくれた。

ソファに腰を下ろすように促された私に、先生はまたハンカチを差し出す。

ああ。私。一体、先生に何枚のハンカチを使わせているのだろう?

でも、私はそんな先生の優しさに甘えたくて、素直にハンカチに手を伸ばす。

先生のハンカチで後から後から溢れる涙を拭っていると、頭にふわっと優しい風と温もりを感じた。

え?

思いがけない感触に、涙を流していた顔を上げる。

そこには先生が確かに、私の頭を優しく撫でてくれている姿が、涙で揺らめいて見えた。

先生の手は大きくて、温かい。その温もりにまた涙が溢れて来る。

でも。そんな感傷的な私に聞こえて来た言葉は。


「あの。福田さん?」

「・・・はい?」

「あのさ。落ち着いたら・・・鏡を見た方がいいよ?」