**紫乃**
「福田さん?とりあえず部屋に入ろうか?鏡を見た方がいいと思うし。あ!部屋に入ったからって僕は福田さんに変なことはしないから安心して。」
変なこと?
もしかして、先生が言っている変なことって、アレ?のこと?
私は碧にアレだよな?って、聞かれて『うん』って、答えてしまったことをまた思い出す。
先生はきっと私のことを、今度こそ“軽率な行動をする女”だと思ったよね?
もう嫌。また涙がとめどなく溢れ出す。
「ああ。困ったな。福田さん?いいね?部屋の鍵を開けるよ?」
涙で声にならない私は、ただコクリと頷くしか出来ない。
そんな状況の中で、私の耳に機械音が届く。
きっと先生が、707号室のキーを解錠した音に違いない。
涙で歪んで周りがよく見えない状態の私は、先生に肩を支えられながら707号室に足を踏み入れた。


