コイビトは

オヤジの話をされて、俺の気分が下降したのも、確かだ。



オヤジの話は、いまだに俺の中ではタブーになっている。


会話がとぎれて、いったい俺はいつまでここにいるのだろう、という気になってきた。


練習の時間なら、本当に居ても邪魔になるだけだろうし。


「帰ります。すいません、長居して」


「いえいえ、また来てよ、本当に。


きみがいたら、ラヴィコも話し相手がいて、私たちが作業できるから」


ライは冗談っぽくそう言って、俺は苦笑した。


軽音の部室を出て、部室棟の入り口まで来ると、自販機の前にリディルルがいて、缶コーヒーを飲んでいた。


「あれ、帰るの?」

リディルルはたいして興味もなさそうに、顔だけ俺のほうを向いて聞いた。


「うん、練習にいても邪魔だと思うし」