コイビトは

「失礼だけど、きみのお父さんって」


突然、そんな話で俺はかなり驚いた。


「父は、すでに死んでますけど…」


「え、あ、そうなの!?」


ライは素で驚いていた。まるで父と知り合いだったけど、死んだ事をはじめて知ったような。


「いつ?」


「うちのオヤジのこと、知ってるんですか?」


俺はさすがに不思議に思ったので、そうきいてみると、ライはハッと何かに気づいた顔をして、


「あ、そうか…ごめんね、失礼な事聞いて」


と、俺の問いに対する答えはしなかった。



俺は、普通にライに対して、学部のこととか、バンドのこととか、他愛ない事を話そうと思っていたのに、唐突にそんなことを聞かれて戸惑って、その後普通に話すのも不自然な気がして言葉に詰まった。