コイビトは

「こんにちは」


俺が入ると、部屋の中にいたのはラヴィコと、ベースのライだけだった。
リディルルは、元々どこかに行く途中だったのか、そのままどこかへ行ってしまった。

部屋の中は乱雑に本(主に音楽関係の雑誌やスコア表)が積み重なっていて、本棚も机の上も、そういった楽譜や書類でいっぱいだった。

机も多くあり、書き散らかされた楽譜が何枚か、床に落ちている。


軽音だって、楽譜が書けなければ音楽は作れないし、音を調節したり、バランスを考えたり、そういう地味な作業も多いのだろう。


「同じ大学だったんですね!


えへへ、嬉しいな、また会えて」


ラヴィコは素直に俺を歓迎してくれた。


ライは、にこりと妖艶に笑って俺にぺこりと頭をさげた。


「突然…すいません、お邪魔しちゃって」

「いえいえ、いいんですよ! どうぞ、座って座って」


ラヴィコに勧められたイスに座って、俺はいったいどうしたものかと考えていた。