コイビトは

唐突な報告に、俺は焦った。



行かなきゃ、という気持ちと、行ってどうする、という気持ち。



確かに、行ったところでこれから練習する彼女たちの邪魔をするわけにはいかないし、例え邪魔しなくて、練習を見せてもらえたとしても、彼女たちと会話することはできず、それじゃあ意味がない。



『お前、昨日リーフのストリート見てた?』



「え、えああ」


俺は返事になっていない返事をした。


『ラヴィコってやつが、お前のこと覚えてるって。良かったら来いよって言ってるけど』


「行く。今すぐ行く」



俺はもうそのときには軽音の部室に向けて走り出していた。



『おお、俺これからバイトだからいないけど、部室入ってくれていいから』


そんな最後の言葉をほとんど耳に入れずに、俺は電話を切った。