コイビトは

俺はそのとき、何のことを言われたのかよくわからなかった。


「ああ、原田さん…」


思い出す時間を作るために、わざとゆっくりつぶやいて、


「うん、何?」


「原田さんちでやるってさ。場所知ってたっけ?」


「いや、知らねぇや」


「じゃ、一緒に行くか。プレゼントも用意しておけよ」


「プレゼント?」


「ちょっとしたものでいいからさ」


「わかった」


俺は、ちょっと上の空だった。