コイビトは

それがいやなカンジで、俺は少し不機嫌に電話に出た。


『もしもし?』


「もしもし…なんだ、縣か」


『なんだってのはひどいな。忙しいところだったら悪かったけど。


…あれ、オマエ今どこにいるんだ?』


縣にはきっと、街のざわめきと「リーフ」の演奏が俺の声と一緒に聞こえているのだろう。



「今、橋の上だよ、昨日ストリート見た」


『何で? 昨日の子たちまた見てるのか?』


「…いや、今日用事でここで降りて、今から帰るとこ。


…たまたま、今昨日のグループの前にいるけど」


俺は白々しく嘘をついた。