コイビトは

何組もいた路上アーティストたちは、早いうちは声が混ざったり、雑踏の声にまぎれて聞きづらかったけど(でもアーティストたちはそこで懸命に自分はここにいるんだよ、ってことを主張していた)、人がいなくなると、彼女たちの声が、静かにはっきりと聞こえてきた。



リディルルの声は、静かなところで聞くと、とてもやさしくて、キーボードの奏でるメロディがその声を乗せて音を運んでいるのが見えるようだった。



PM11:00.


繁華街とはいえ、さすがにほとんど人はおらず、いる人は帰りを急ぐばかりで。


彼女が、俺のために歌ってるんじゃないかなんて、さすがに妄想のしすぎだと思うけれど。


俺が妙な夢見心地にひたっていると、ポケットでケータイが震える感覚。