シャワーを浴び終えた隆也が出てきた。

「浴びるか?」

「帰ってから、お風呂に入るよ。顔洗いたい。」

洗面所に行くと、タオルとハミガキセットを出して渡してくれた。

タバコを買うついでに、コンビニで買ってくれたらしい。

用意がいいというか…
マメというか…

「隆也、使ったタオルどこに置いたらいい?」

「ああ、カゴに入れてて」

男一人暮らしとは思えないくらい、綺麗にしてある。

本当に隆也だけなの?

そんな考えが頭を過ぎる。

「使わせてくれて、ありがとう」

リビングに戻ると、隆也がアタシの手を握った。

「梓…爪…」

えッ?
見ると何も変わった所はない。

「俺はネイルアート好きじゃねぇな。シンプルなのがいい」

「わかったって!」

手を離し隆也の胸をパシッと叩いた。

「さて…行くか!」

隆也は笑ってるけど、アタシは恥ずかしくて…

下を向いて「うん」と言うだけだった。

なに意識しちゃってるの?
いつものアタシは、どうした?

駐車場に向かう彼の背中を見ながら思った。

「後ろじゃねぇからな」

助手席のドアを開け隆也が言った。

嬉しいけど…
それは幼なじみとしての優しさなのかな…