隆也が戻った時には、もう寝ていた。

「この爪のどこが可愛いって?」

リボンや花を描くじゃなく、まるでボタンのように付いてる爪を見て

『全く分からねぇ』

と首をかしげた。

「梓、タバコ買ってきたぞ」

起きる気配がない。

「梓ちゃぁん…起きないなら“チュウ”しちゃうよぉ」


唇まで…
もう少し…


「なぁんて!俺は寝込みを襲うなんて、卑怯な事はしねぇ!」

誰も聞いてないのに大きなヒトリゴトを言った。


本当は…
したいけど…


もぅいいや!

隆也は、半ばやけくそになって、ソファーに横になった。


外はもう、明るくなっていた。