「あ…冗談だよ。隆也と元カノが納得するまで話し合ってよ。急がせるつもりはないから」

「わかったよ、梓…」

隆也の顔が近付いてきた。
アタシは顔を背け

「やだ、ダメ。決着ついてからにして」

と言って隆也の口元を片手で塞いだ。

「帰る前にキスしたかったのに」

「ちゃんと終わってからにして」

「わかったよ」

そう言って、ギュッと抱き締めた。

耳元で
「待ってろよ」
そう言うと、車に乗り込み、手を振って家へ戻って行った。

円満に解決するだろうか…
そう心配しながら、隆也の車が見えなくなるまで、手を振った。





振り返り、家まで小走りに戻る。

途中、隆也が出ていった方向と逆側から視線を感じ、顔を向けた。

外灯の明かりが、それを照らした瞬間、アタシは凍り付いた。









「見つけたよ…"梓チャン"」












<おわり>