「隆也…待たせてるんだから、もう戻らなきゃ…」

アタシを抱き締める隆也の腕が、なかなか離れなかった。

「隆也…」

「もう少し、このままでいたい」

「また電話くるよ?」

「そうだよな…」

隆也の腕の力が緩んだ。

「送るよ」

玄関から少し離れた駐車場に、隆也の車が停めてあった。
そこまで一緒に、手を繋いで行った。

隆也が助手席の小物入れを開けると、中にあった小袋を手渡した。

「何これ?」

「開けてみて」

中にはピアスが入っていた。

「あげる。俺の好きなデザインだよ。梓も好きだろ?シンプルで」

「うん…可愛い。でも、もらっていいの?」

「梓に似合うと思って買ったんだ。今度は捨てないでよ?」

「うん」笑いながら頷いた。

「それと俺の嫌いなネイルアート、もうしないで。シンプルがいい。あと…」

「まだ何かあるの?」

すると少し間をとって隆也が

「また来るから。次はちゃんと整理してから来るから」

と、真面目な表情で言った。

「そう?お互い納得出来てからにしてよ?セフレとか嫌だから」

笑いながら話した。

「梓…待ってくれるか?」

「多少はね。長すぎるのは無理だわ…待つのはキライだから」

「梓…」

少し困った顔をしてアタシを見た。