隆也だって彼女の事が嫌いになって別れた訳じゃないんだから、元に戻ればいいんだよ。

アタシ達は、やっぱり"幼馴染み"で十分なんだから。

隆也は、まだ電話してる。
あの困った顔…
気の毒だね…
でも仕方ないよ。

体だけの関係なんて、男の都合だけじゃん。
女は、やっぱり"自分だけの男"になって欲しいもんだよ。

もう30分になる。
痴話喧嘩なら他でやってよね!
ここ、誰の家だと思ってんのよ!

「隆也、帰んな!」

アタシが言うと、隆也が慌てて電話を切り

「あっちに聞こえるだろ?!」

と、文句を言った。

何だか隆也が情けなく見えてきた。

「隆也、帰んなよ。帰ってゆっくり電話するなり、彼女呼び出すなりしたら?」

「彼女じゃねぇよ!」

隆也は、かなりイライラしてる。
上手くいかないらしい。

「とにかく、アタシには関係ないんだからさ、続きは自宅でやってくれ」

タバコに火を点け、フーッと煙を吐き出した。

「梓、冷たいな…」

「当たり前の事を言っただけだよ」

隆也の携帯は、あれから何度もバイブが響いている。
着信の表示が出てるのに、一向に出ようとしない。

「出たら?」

「いいんだよ」

「待ってるんだよ。やっぱり帰んな」