隆也…
やっぱりアンタはズルいわ。

アタシの気持ちを知ってて"嫌い?"って聞いたんでしょ?

アタシの気持ちを知ってるから、抱きしめてるんでしょ?

はぁ…切ないなぁ…

「梓…帰ろ…」

隆也が助手席のドアを開けたけど、それを断り、アタシは後ろの席に乗った。

隆也は何も言わず、そのまま運転席に移動した。

家に着くまでの間、一言も会話がなかった。

「上がっていく?」

「いいの?梓の彼氏に怒られない?」

「残念ながら彼氏はいません」

ソファーに座り、周りをキョロキョロ見渡した隆也が

「男がいた感じはないな」

と言った。

「だから、いないって」

コーヒーを出し、椅子に座ると、すぐにタバコに火を点けた。

「なぁ…梓って、そんなにタバコ吸ってたか?」

「ん?1日2箱くらいだよ。最近もう少し増えたかもね」

テレビをつけるけど、特に見たい番組がある訳でもなく、何となく楽しそうな声が聞こえるだけだった。

「隆也…」

「ん?何?」

「この前の電話の人、彼女でしょ?」

「急に何だよ」

「答えて」

アタシは聞かずにはいられなかった。