「やっぱりな…」

それきり話さなくなった。

だって…
もう必要ないもん。
ピアスを誉めてくれた人は、誰かの人になっちゃったじゃない。

それなのに、いつまでも持ったままなんて、未練がましいもん。

もう何本タバコを吸っただろう。

まだ着かないのかよ…
黙って座ってるのも、かなり疲れる…

ウィンカーの音が聞こえると、車は海の側の駐車場に入った。

「梓…ちょっと降りないか?」

「別にいいよ」

初めて来た場所だった。

ピアスを投げ捨てた所は砂浜だったけど、ここは小石がいっぱいだった。

夜だから足元が良く見えない。

「隆也、やっぱり戻っていい?」

「歩きにくいか?ホラ…」

そう言ってアタシの手首を掴んで、ゆっくり歩いた。

「ここでいいか…」

そこは駐車場から浜辺へ行き来するための階段だった。

振り返ると、少し間はあるけど隆也の車があった。

「ねぇ、あっちからじゃなくても、ここまで来れたんじゃない?」

「あ…ホントだ」

まぁいいじゃん、そう言ってアタシの隣に座り、タバコを出した。