結局、眠れないまま朝を迎えた。

隆也が帰ってから携帯の電源を切っていたから、何の音も鳴らなかった。

とても静かで…
とても切ない夜だった。

カーテンを開け、またベッドに潜り込んだ。

『いつの間にか眠っていたんだ…』

時計は13:30を少し過ぎていた。

目覚めのシャワーを浴びて、出掛ける準備をする。

ゴミ箱から、昨日捨てたピアスを拾い、それをバッグのポケットに入れた。

車のエンジンをかける。
BGMはスローバラード。

1時間くらい走ると、海岸に出る。
そこは時々、隆也と遊びに来た場所だった。

パーキングに車を停め、砂浜を歩き、適当な所に腰を下ろす。

寄せては返す波を、ボーッとしながら眺めていた。

タバコに火を点け、ポケットの中のピアスを取り出した。

隆也が珍しく誉めてくれたピアスだけど…


「もういいや…」

海に向かって投げ捨てた。


「はぁ…終わったなぁ…」


涙が次々と流れ落ちた。