2008年12月24日 クリスマス・イブ


「ジングルベール♪ジングルベール♪……」



140センチのクリスマスツリーのオーナメントをポンと指ではじくとコタツの中に足を入れる。



その顔はクリスマス・イブだと言うのにつまらなそう。



「はぁ……」



重いため息を一つ吐くとゴロッと寝そべった。



つまらないな……。


テレビは点けっぱなし。


どこのチャンネルもクリスマス特集。



「杏梨、本当に一緒に行かないの?」



オリーブグリーンのシックなワンピースを着た母、貴美香が居間に現れた。



「ママ、恋人たちのクリスマスを邪魔するほど野暮じゃないからね?」



モソッと起きてコタツの上のミカンを一つ取る。



「春樹さん、杏梨も一緒にって言ってくれているのよ?」



「うん 春樹おじさんは優しいから でもわたしは家にいる方がいいの」



むいたミカンをひとつ、口に放り込む。



その時、インターフォンが鳴った。



「ほら、春樹おじさん、来ちゃったよ?」



「え、ええ……」



杏梨を1人で残して行く事が気がかりで表情は浮かない。



「早くっ!楽しんできてね♪」



にっこり笑って送り出す。



貴美香はしぶしぶブラウンのカシミアのロングコートを羽織り出かけて行った。


クリスマス・イブの今日、わたしにも予定はあったんだよ。

親友の香澄ちゃんと我が家でクリスマスパーティー。

それがさっき、熱が出て来られなくなったと香澄ちゃんから電話があったの。

とても残念そうな香澄ちゃんの声は擦れていた。

今夜はお泊りでたくさん話をしようねって言っていたんだけど……。