さっき押し付けたクッキーを、俺の目の前に突き出した。

彼女のかじった後が付いているクッキーだ。


「知ってるよ。」


クッキーを自分の方に戻して彼女が言う。


「いつも、最後の一枚くれるね。」

「そうか?」


彼女の言葉に、まとめたゴミをゴミ箱に投げ入れて答えた。投げ入れたビニール袋は見事ゴミ箱に収まった。


「っしゃ、入った!」

「ごまかすの下手くそだよね?」

「‥‥たまたまじゃねぇの?」

「違うもん。いつもだもん!」


自信満々にそう言って、テーブルを挟んで座っていた俺の隣に移動した彼女。


「いつもね、最後の一枚くれるから、幸せだなぁって思ってて…」


ゆっくり言葉を紡いでく君。


「いつもね、どうやったら幸せってお返し出来るのかなぁって思うんだ。」

「や、別にそんなクッキーぐらいで…」


真剣に見つめてくる君に何だか恥ずかしくなって、ごまかすように目線を反らした。


「ね、どうしたら幸せ?」


首を傾げて聞いてきた君。その表情は真剣そのもので、ほんと子供っぽいと言うか、一生懸命と言うか…


「‥‥お前が笑ってたら、それでいんじゃねぇの?」


照れ臭くて目を見てなんて言えないけど、俺がそう言ったら彼女は目を丸くした。


「‥‥ぁ…解った!はい、どーぞ?」


そして、持ってた最後の一枚を半分に割って、歯型の付いてない方を俺に差し出した。


「何?」

「幸せ、半分こっ!ね?」


…そんな君が可愛いなんて、悔しいから、絶対一生言ってあげない。